Sion
「なゆから留学の話、聞いた?」
留学…?
その言葉に希愛は首を傾げた。
すると、弓音は肩をすくめた。
「…話してないんだ」
という小さなつぶやきが聞こえてくる。
どういうことだろう。
希愛は足を止め、真っ直ぐ弓音を見た。
「留学って…何ですか?」
「…私が日本に来た理由だよ。なゆを…迎えに来たの」
花が咲いたような笑顔で笑う弓音
気づけば、希愛の手は小さく揺れていた。
ぎゅっとその手に力を入れる。
「迎えにって…」
「…日本での活動なんて限られてる。曲の提供…それじゃあなゆのピアノが輝けないわ」
風が通り抜ける。