Sion
希愛は靴を脱ぎ、出されたスリッパを履いた。
「…なゆなら自分の部屋だから」
「…はい」
弓音は身を翻し、奥へと行こうとした。
その背中に希愛は声をかける。
「ゆのさん!…聞かないんですか?」
「…聞かなくても分かるわ、あなたの顔を見れば」
そう言って弓音は振り返った。
その顔には笑みが浮かんでいた。
「…後悔しない?」
「決めたことですから」
後悔しないって決めた。
もう迷わないって。
そう言って希愛は二階へと上がっていった。