Sion




那由汰の部屋の前に立ち、もう一度深呼吸をする。
覚悟を決めて、扉をノックし、扉を開けて中に入っていった。




「…希愛」




部屋の中に入ってきた希愛を那由汰は目を丸めて見つめる。
希愛はふっと笑みを見せた。




「…今、いいかな?」




那由汰はベッドの上で音楽雑誌のようなものを見ていた。
雑誌を閉じ、ベッドから降りる。




「…何?」




今から言う言葉を何度も頭の中で唱えただろう。
口にするのが怖くて、唇が震えた。




どういう反応をされるか怖かった。
自分で決めたことなのに不安でいっぱいだった。




覚悟を決めて、希愛は言葉にした。




「那由汰、別れよう……」




それが希愛の決断だった。
弓音の話を聞いて、考えた結果だ。




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