Sion
だから―――
「今度は私が那由汰の背中を押したい」
躊躇っている夢の道を…消させたくない。
那由汰の夢を叶えて欲しい。
ちゃんと進めるように今度は希愛が那由汰の背中を押そうとしていた。
「私のことは大丈夫。もう…辛くないから。悲しくないから」
那由汰が傍にいなくても、乗り越えるから。
自分の力で乗り越えてみせるから。
だからどうか、那由汰は自分のことを考えて欲しい。
「那由汰のしたいことをすることが私の喜びだから」
ニコッと笑みを浮かべようとするけど、多分上手く笑えていない。
言っていて、泣きそうなのだ。
本当は不安
だけど那由汰のことを想って堪えている。
自分にはそれしかできないから。