Sion
気づいたら涙が流れていた。
辛くなんてない、那由汰を思ったら。
なのに涙は流れる。
そんな希愛を那由汰はふわっと抱きしめた。
いつもと違って力強い那由汰を希愛は見上げた。
「なゆ…た…?」
「…無理させてごめん」
希愛は首をブンブンと横に振る。
那由汰は悪くない。
決めたのは自分だ。
「…大丈夫だよ」
自分で選んだ答えだから…。
「…3年以上も帰ってこないんだよ?」
それはすごく寂しい。
「電話も…メールもできないと思う」
苦しいと思う。
不安な気持ちでいっぱいだと思う。
「帰ってきたとき…今と同じ気持ちか、わからないよ?」
ずっと想っている保証なんてどこにもない。