Sion
希愛と一定の距離を置いた。
希愛は嫌われたのように感じ、戸惑う。
だが、そうではなかった。
那由汰は優しい穏やかな笑みで長い指を動かす。
『君の名前…教えてくれる?』
その優しさが希愛には温かかった。
震える指で、泣きそうな笑みを見せながら紡ぐ。
『花澤…希愛…です』
那由汰は嬉しそうに微笑む。
『よろしく、希愛』
初めて会ったとき、希愛の中に何かが流れ込んだ。
那由汰から感じたのは、優しさと温かさ。
そして、希愛の心を揺さぶる音だった――――。