Sion
無自覚
「もう!心配したんだからねっ!?」
希愛が那由汰と共に教室に戻ると、仁王立ちの律花が立っていた。
眉間にしわを寄せ、腕を組む姿はとても迫力がある。
『ご、ごめんなさい…律花』
しゅんっと落ち込む希愛を律花はぎゅっと抱きしめる。
「希愛、泣かないで!希愛が悪いわけじゃないんだから!」
希愛はぶんぶんと首を横に振る。
そして、ちらりと那由汰に目を移した。
那由汰はふわぁと大きな欠伸を無防備にする。
そんな那由汰を湖季ははぁっと肩をすくめ、呆れる。
「人事みたいに思ってるだろうけど、那由汰が悪いんだぞ?花澤さんを強引に連れてって…」
湖季の言葉を聞いて、那由汰はは?と間抜けな声を出す。
自覚していないのが、那由汰の悪いところだ。
キョトンと目を丸め、湖季を見つめる。
湖季は深いため息をついた。
「だから…花澤さんを…」
「花澤って?希愛じゃなくて?」
名前を声に出されて、希愛は頬を赤らめる。
声に出されるのはやはり恥ずかしかった。