Sion
那由汰は当たり前のように言う。
これが当然と主張するかのように。
そんな那由汰にキツイ睨みを利かす人が一人いた。
「希愛って呼び捨てにしないで!希愛は私の希愛なんだから!」
と、那由汰に向かって叫ぶ。
那由汰はワンテンポ遅れて、
「…二人は付き合ってるの?」
と、真顔で律花に尋ねる。
律花ははぁ?と眉をひそめた。
「希愛は私の親友!変なこと言わないで!」
嫌いなタイプだ…と律花はため息をついた。
面倒で好きにはなれない。
湖季とはまた違うタイプだが、接しにくい。
律花の言葉を聞いた那由汰は何故か嬉しそうに微笑む。
「じゃあ、希愛は俺がもらっていい?」
甘い声と甘い笑顔で言った言葉は希愛の顔を赤く染める。
これは無自覚なのか、それとも確信犯なのか。
それは誰にも分からなかった。
湖季以外は。