Sion
まるでそれが当たり前であるかのように。
声を出すことができず、周りになんども迷惑をかけた。
周りと溶け込むことができなかった。
人と親しくなることも…
こうやって楽しい会話に入ることも、希愛には新鮮でとても温かかった。
希愛はふっと笑みを浮かべる。
すると、うっすらと笑みを浮かべ見つめる那由汰の目とバッチリ合った。
とろけるような甘い笑みが希愛を見つめる。
その笑みに恥じらいを感じながらも、希愛ははにかんだ。
『…希愛のこと、もらっていい?』
那由汰は湖季と律花に気づかれないように、手話をする。
その言葉に希愛は顔を赤くした。ブンブンと首を横に振る。
『ダメ…です』
『どうして…?』
那由汰は子犬のように不思議そうに首をかしげる。
希愛は自分の気持ちを素直に手話で表す。
『私に関わったら…あなたが嫌な思いをしてしまいます』
それはここにいる律花と湖季もそうだ。
二人はとても優しい。
接してもらっているたび、希愛は感じていた。