Sion
希愛と那由汰の距離は少しずつだが縮まっていた。
希愛に対して優しい瞳で見る那由汰に希愛も心を開いていた。
『まだ…決めてません。…奏くんは何に出るつもりなんですか?』
『…運動あまり好きじゃないんだ』
と、那由汰は苦笑する。
少し意外だった。
那由汰のピアノを弾く姿はとても綺麗だ。
だが、汗を流し、走る姿も那由汰に似合っている。
希愛が素直にそう伝えると、那由汰の頬は少し赤く染まる。
その頬を隠すように、那由汰は視線を逸らす。
「希愛…素直すぎ」
と、ぼそっと呟いた。
希愛は首をかしげ、那由汰を見る。
『…なんでもないよ』
那由汰は希愛の方に向き直し、そう告げる。