Sion
そんな二人の様子を前から見ていた律花はキッと那由汰を見た。
指を差し、目に涙を浮かべる。
「そこっ!私の希愛と仲良くしないでっ!」
「…嫉妬?」
「違う―――っ!!」
二人の会話を聞いていたクラスメイトは『まただ』と面白そうに笑う。
何人かは肩をすくめ、呆れていた。
そのうちの一人が湖季であった。
湖季はくすくすと笑い、希愛にほほ笑みかける。
「相変わらずだな、この二人も」
入学した時から犬猿の仲といった感じだ。
噛み合ってない二人の会話は聞いていて可笑しい。
「そもそもあんたのこと、認めてないからっ!」
「…どうしたら認めてくれんの?」
「一生認めないっ!」
機嫌の悪い律花とは反対に那由汰はのんびりとしていた。
どうして機嫌が悪いのか、全く気づいていないようだった。
『変な奴』とぼそっと呟いていた。