Sion
放課後になっても那由汰の姿はなかった。
昼休みからいない那由汰の机を希愛はただ静かに見ていた。
湖季に尋ねてもどこに行ったか知らないようだった。
呆れたようにため息をつき、『いつものことだから放っておきな』と希愛に笑みを見せた。
だが、希愛は気になって仕方がなかった。
放課後は那由汰との約束がある。
『一緒に帰ろう』と誘った本人が居ないとどうすればいいかわからない。
希愛がどうすればいいのか迷っていると、
「希愛、どうしたの?」
と律花が話しかけてきた。
希愛は那由汰のことを話した。
すると、律花は眉をひそめた。
「約束したのに本人いないんじゃ意味ないじゃない」
とはぁーっとため息をつく。
「巴さん、今日は委員会?」
突然、湖季が二人の間に入ってくる。