Sion
だが、幸せになるはずだった二人の関係を壊したのは―――
『理緒さんのお腹にはもう爽の子供がいました。爽は…とても楽しみにしていたんです』
思い出すたびに涙がでそうになる。
あの日の出来事を…希愛は忘れられない。
大切だった。
兄として、そして初恋の人として。
想いが届かなくても、家族として幸せを見届けたかった。
なのにあの日、一瞬で崩れてしまった。
理緒が泣き崩れる姿
キッと睨む目には憎しみが宿っていた。
『あなたのせいで爽はっ』
理緒は希愛のことを許してくれない。
理緒にとって大切な人を希愛は奪ったのだ。
『爽は…車に轢かれそうになった私を庇って…亡くなってしまったんです』
あの日のショックから声を失った。
どれだけ泣いても、叫ぼうとしても声は出なかった。