Sion




希愛の道を照らしてくれた人
だが、希愛の声と共に失った。




『あの時、誓ったんです。もう…大切な人を失いたくない。一線を置いて離れようって…』




希愛の言葉を聞き、那由汰は大きな手で希愛の頭をやさしくなでる。
その表情はとても優しくかった。




「…馬鹿だね」




とても優しげな声で叱咤する。
希愛は『あなたには分からない』と目を背ける。
そんな希愛に那由汰は続けた。




「どうして爽さんが守った未来を大切に過ごさないの?爽さんは希愛にこうなって欲しくて守ったんじゃないんだよ?」




『…そうわかってても…できないんです…』




爽を失って…声を失って…
明るかったはずの景色が一気に曇を見せた。




理緒は会ってくれない。
昔のようには戻れない。




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