Sion
光の夢
その日の夜、希愛は夢を見た。
真っ黒な世界に差し込んだ光
その光に導かれるように歩いた。
その背中にあたたかなモノを感じた。
この温かさを希愛は知っている。
ずっと昔に感じていた、ぬくもり。
懐かしくて涙がでそうだった。
「そ…う…」
出るはずのない声が唇から洩れる。
振り返った先には爽の笑みがあった。
「希愛」
爽が名を呼ぶ。
希愛はその声に答えるかのように爽に抱きついた。
「そう…爽っ…」
現実じゃないはずなのに感触がある。
爽が目の前にいる。最後に見た姿から変わらない。
あの時のまま、時が止まっているようだった。