Sion
泣きじゃくる希愛の頭を爽は優しく微笑み、大きな手で撫でた。
「希愛…大きくなったな。大人になった」
「そう…」
希愛は爽の名を呼び続けた。
まるで目覚めるのを拒むかのように。
そんな希愛を爽は優しく見つめる。
愛おしそうに希愛の頬を撫でた。
「希愛、そんなに泣くなよ…」
「だって…だって…」
夢だと分かっていても嬉しい。
触れている手からはちゃんと体温を感じる。
まるで『此処にいる』ことを主張しているかのように。
ずっと…後悔していた。
ちゃんと話せなかったこと。
居なくなって…失って…光が消えた。
後悔と懺悔が心を埋め尽くした。
爽は最後まで希愛を責めなかった。
ただ幸せを願っていた。