Sion




だけど、希愛はそれを受け入れられなかった。
爽の願いを希愛自ら拒んだのだ。




「爽…ごめんなさい…」




ずっと言いたかった言葉を希愛は消えそうな声で言う。




「なんで謝るんだよ」




「だって…爽は私のせいで…」




爽は首を横に振る。
『それは違うよ』と笑みを浮かべて否定した。




「俺がしたくてしたんだ。希愛が謝ることじゃない」




「でも…爽には理緒と子供が…」




理緒のウエディングドレス姿も生まれてくる子供の姿も見ることができなかった。
誰よりも家族に憧れていた。




早くに両親を亡くしてひとりぼっちだった爽
そんな爽を希愛はずっと誰よりも近くで見ていた。




< 67 / 303 >

この作品をシェア

pagetop