Sion
だから知っていた。
爽は『家族』を欲しがっていたことを。
なのに…希愛が壊した。
「家族になるはずだったのに…」
「俺にとって希愛も家族だったよ」
と、爽は優しい笑みを見せる。
「子供を見れなかったのは残念だったけど、希愛をかばったことに後悔はしてな
い。
だから…『ごめんなさい』なんていらない」
希愛は目を丸める。
すぐにふっと笑みを洩らした。
「…ありがとう」
「どういたしまして」
夢の中の爽もとても優しかった。
希愛を責めようなんて思っていないようだ。
ホッとしたが、少し胸が痛かった。
責めて恨んでくれれば、爽を嫌いになれたのに…
決してそうしない爽を…希愛は忘れることはできないだろう。
『初めて好きになった人』は心の中でずっと生き続ける。