Sion




希愛はすっと爽から離れた。
涙を浮かべながら、笑顔を見せた。




「爽…大好きだよ。ずっと…忘れないから…」




爽はぎゅっと希愛を抱きしめる。




「…俺も」




聞きたかった言葉
叶わない恋だった。
嘘でも『好き』と言って欲しかった。




爽が言った『好き』は希愛の『好き』とは違う。
そう分かっていても、『好き』と言われたことがとても嬉しかった。




希愛は爽に抱きしめられながら、すっと目を閉じた。




「爽…私にずっと傍にいるって言ってくれた人がいるの」




その人を希愛は思い浮かべる。
真剣な眼差しで希愛を捕らえる。
温かくて優しい人、そして美しい音を奏でる人




「…どんなに拒んでも傍にいてくれて…優しくて…どうしてだろ…凄く…胸が温かくなるの」




「それは…俺の時にも感じてた?」




希愛は首を横に振る。
爽を想っていた時とはどこか違う。




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