Sion
そこはまるで別次元だった。
ここだけ世界が違う…そう感じられた。
そう感じるのはこの中庭の雰囲気だろう。
そして、学校の中とは思えない桜の木々
律花はうわぁと歓喜の声を上げ、希愛は息を吐いた。
目に映る景色は桜色に包まれていた。
なんと表現したらいいかわからない。
ただ『綺麗』という言葉が合っているような気がした。
「綺麗だね…希愛」
希愛は手話をすることもコクりと頷くこともできなかった。
言葉にできないではないが、それに近かった。
とても綺麗でこの空間から出たくなかった。
暫くその桜の木々を希愛と律花は見ていた。
すると、ガサリという物音が聞こえ、希愛と律花はパッと音のした方を見る。
「な、何?」
律花は戸惑う声を出す。
ガサッガサッと草木を分ける音が大きくなる。