Sion
希愛はまだ幸せになることに抵抗があった。
爽がいくら希愛を許していても、心の傷は癒えていなかった。
まだ一歩を踏み出すことができない。
それでも…
「彼のこと、裏切っちゃ…ダメだよね」
希愛をちゃんと考えてくれる人
初めて理解してくれた。
胸にトクンと響く鼓動の意味はまだ分からない。
だけど、この温かくて優しい感情を希愛は感じていたいと思った。
「爽…また、会ってくれますか?」
夢の中でいい。
現実では会えないから。
せめて…この空間で。
爽は優しく微笑む。
「会えなくても…俺はずっと希愛を見ているよ」
大きな手のぬくもりが…
いつまでもこの肌に染み付いているような気がした…。