Sion




希愛には不思議で不思議でたまらなかった。
だけど同時に、夢で見た爽の言葉を思い出す。




『その気持ちは…希愛自身が気づかないと意味がない』
爽は確かにそう言っていた。そのことを希愛は覚えている。




この気持ちは…何ですか?
どうして…那由汰を見ているとこんなにも切なく、悲しくなるのだろう。
笑顔を見せている那由汰に希愛は少し不安を覚えていた。




理由は分からない、希愛自身でも。




何も言わない希愛を不思議に思ったのか、那由汰は首をかしげる。
希愛の顔をのぞき込み、『大丈夫?』と尋ねた。




希愛は戸惑いながらも頷く。




『大丈夫だから心配しないで』




そう見せた笑みは少し陰があった。
那由汰は眉をひそめ、ゆっくりと希愛に近づく。
自分の手で希愛の頬を包み込んだ。




「嘘。じゃあなんでそんな辛そうな顔してるの?」




希愛はブンブンと首を横に振る。
『大丈夫』と何回も言っているように那由汰は感じた。




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