Sion
そんな希愛に那由汰はくすりと笑った。
「俺も嫌いじゃないよ。だから希愛のこと、心配になるんだ。ガラス細工みたいで…さ。
希愛、ゆっくり乗り越えていけばいいんだよ」
那由汰はすごく優しい。
その優しさがとても苦しい。
那由汰と出会ってから、自分の中の何かが変わっていく。
その変化が少し怖い。爽のことを忘れてしまいそうで…
本当は忘れたほうがいいのかもしれない。
もう…思い出さないほうがいいのかもしれない。
それでも…自分を苦しめているとしても…覚えていたい。
だから…だから…もう、那由汰と関わらない方がいいのかもしれない。
希愛はそう思い始めていた。