Sion
中庭から戻ってきた希愛を律花はため息と呆れ顔で迎えた。
「またあいつといたの?」
希愛はコクりと頷く。
隠していても、律花にバレてしまう。
それに、律花に隠し事をしたくはなかった。
怒られる気がして、希愛は顔をうつむかせた。
だけど、律花はただ優しく希愛の頭を撫でるだけだった。
希愛が顔を上げると、律花はニッコリと微笑んだ。
「希愛、最近いい顔するようになったよね。あいつの影響かな」
希愛自身はよくわからなくて、きょとんと首を傾げた。
そんな希愛に律花は言葉を続ける。
「分かるの、ずっと傍にいたから。爽が居なくなって…希愛は笑うこと少なかったよね?
だけど…最近はよく笑顔を見せてくれる。あいつが…奏が…希愛を変えたんだよね」
自分が変わったことなんて自分自身はよくわからない。
だけど…今この瞬間が凄く優しくて心地いい。