Sion




だけど、律花の表情は曇っていた。
悲しそうに微笑む。




「みんな、そう見せていただけ。陰で悪口とか普通に言われてた。『男に人気だからって調子にのってる』とか、
『どうせみんなによく見られたいだけ』とか…それが辛くて…一人が嫌で…希愛
といた。結局…利用しちゃったんだよ、希愛のこと」




そんなことない。
だって律花はいつも笑顔だった。
いつも希愛を助けてくれて…幼なじみでも嬉しかった。




『当たり前』っていってくれるのが嬉しくて…いっぱい甘えた。
だけど律花は自分で何でもこなして…希愛が助けることなんてなかった。




でも…律花は一人戦っていたのだ。
辛い姿を見せずに希愛の前で気丈に見せていたのだ。




そのことを知って、希愛の心が締め付けられた。
泣きたい気持ちになる。




泣きたいのは律花であって、希愛ではない。
そう思っても、希愛は泣かずに居られなかった。




どうして気づいてあげられなかったんだろう…。
と、後悔と自分を責める気持ちが生まれる。




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