Sion
希愛はぎゅっと律花の手を両手で包み込み、顔を見上げた。
『ずっと…傍にいる。律花の味方だから…弱いところも辛いところも…今度は私が支えてあげる』
どうしてこんな時、この声が出ないんだろう。
どうして伝えたいとき、声で伝わらないんだろう。
どうしても声で伝えたいのに、この喉は自分の心に反して音を出そうとしない。
それがとても憎かった。
律花に対しても…那由汰に対しても…
ちゃんと言葉で伝えたいのに、思うようにできない。
それがとてももどかしくて…
それがとても悲しくて…
ただただ、このぬくもりで伝えるしかなかった。
ぎゅっと握る手を見つめ、律花は微笑む。
「…ありがとう、そんな希愛…あたしは大好きだよ」
首を傾け、微笑む姿はいつも見ている律花よりも大人っぽく見えた気がした。
「辛い思いをしたはずなのに…いつも真っ直ぐだった。弱くても…一生懸命だった。
そんな希愛を羨ましく思ったし、少し憎かった。辛い言葉を投げられても、希愛は…変わらなかった。
あたしとは違う…」
『そんなことない』と希愛は首を横に振った。
希愛自身も心が折れそうだった。
思い通りにならなくて、泣きそうになりながら過ごした。