Sion
希愛と離れた先にいた那由汰をじっと睨む。
那由汰はその視線に気づき、『何?』と不思議そうに首を傾げる。
律花はさっきよりもキツく那由汰を睨んだ。
「率直に聞くけど…あんた、希愛のこと好きなの?」
躊躇いなく、真っ直ぐ聞く律花に那由汰は突然すぎてキョトンとした目を見せる。
「…何、急に」
「別に。他の子には冷たいのに希愛には優しいじゃない。だから、『特別』を感じているのかな?って思っただけ」
那由汰は『どうだろうな』と苦笑した。
そんな姿を見るのは初めてのような気がした。
律花は眉をひそめた。
「何?違うなら思わせぶりな態度見せないで!あの子には…傷ついて欲しくないの」
ただでさえ、希愛の心の闇は深い。
小さい頃に大切で大好きだった存在を目の前で失ってしまった。
あのときから…希愛は声を失った。
傷ついた代償
とても大きくて、傷ついたことも多かった。
泣いている姿も何回も見た。
事情を知らない周りは冷たい目と言葉を希愛に浴びせた。
それでも…希愛は耐え続け、傷つきながら生きてきた。