Sion

特別という想い





視線の先で風を切って走る姿に目を細める。
湖季は何故かとても楽しそうに走っていた。




希愛が見ていることに気づくと、ブンブンと大きく腕を振る。
恥ずかしい思いをしながらも、希愛は小さく手を振った。




走り終わると、湖季は一直線に希愛の元へと走ってきた。
疲れを感じさせない湖季に希愛は『お疲れ様』と笑みを浮かべる。




「ありがとう、花澤さん。巴さんは?」




きょろきょろと目で律花を捜す。
希愛は肩をすくめ、微笑んだ。




『律花なら次の競技に出るから行っちゃったよ?』




「そういえば、巴さんも結構出てたよね。花澤さんはまだ?」




コクりと小さく頷く。
律花と湖季とは違い、希愛は一種目しか出ない。
しかも、クラス全体の競技で個人種目ではない。




人の視線をあまり感じたくない希愛を心配して、律花が提案してくれた。
クラスの誰もその提案に眉をひそめる人はいなかった。
そのことに希愛は安堵している。




律花のリーダーシップはとても安心する。
律花のおかげで希愛のことを悪く言う人はいなかった。




律花だけではない。
希愛の目の前にいる湖季もそして那由汰も…




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