Sion
そうだとしても…
『その想いは…素直であるべきなんだから』
そう言った律花の言葉に従いたい。
希愛はそう思っていた。
湖季は難しそうにうーんと唸る。
「そうだなぁ…花澤さんは巴さんのこと、好きだよね?」
コクりと頷く。
律花のことは昔から大好きで大切な存在だ。
「じゃあ、俺のことは…?」
『好き…ですよ?』
こうやって当たり前に接してくれる。
声が出ないことも、受け入れてくれた。
違う存在ではなく、みんなと同じように接してくれた。
そんな湖季のこと、希愛は好きだった。
と同時に憧れてもいる。
律花とは長い絆がある。
長い絆の中で互いを良く理解している。
だから、大好きで大切。
律花の代わりは他にいない。
湖季はそれとは違うが、どこか似ている。
湖季に伝えると、湖季は恥ずかしそうにだけど嬉しそうに微笑む。
「ありがとう」
でも、何故こんなことを聞くのだろう。
と、希愛は不思議に思った。
そんな希愛に湖季は再び尋ねる。
「じゃあ、那由汰は…?」
那由汰…?
希愛はそっと自分の胸に手を当てる。