Sion
そう考えると、違う気がしてならない。
昔、爽に対して感じていた想いとは違う。
何かが大きく違うのだ。
『その人の心に触れたい。触れて…感じたい。そう思うのは…恋、ですか?』
もっと知りたい。
誰も知らない、何かを。
もっと触れたい。
心も体も…
触れて…感じたい。
知って…感じたい。
同じ時間、同じ想いを感じたい…
そう思うのは『恋』なのだろうか?
湖季はゆっくりと微笑む。
その唇が紡いだ単語を見て、希愛の体から力が抜けた。
やっと分かった。
この胸の奥の温もりの正体に。
どうやら希愛は、奏 那由汰に心を奪われていたらしい―――。