Sion
想いに気づいた瞬間から、那由汰を見ただけで鼓動が高鳴った。
ふっと穏やかな笑みを見るたび、心が切なくなる。
この胸の鼓動と切なさの訳を湖季の言葉で気がついた。
『那由汰のこと…好きなのだ』と。
体育祭が終わり、日が落ちてゆく。
希愛はこの想いをどうするれいいのか、戸惑っていた。
律花に相談すれば…何か答えが見つかるだろうか。
そう考えた希愛は帰る用意をしている、律花の元へとちょこちょこと可愛らしく寄った。
つんつんと律花の肩を突っつく。
すると、律花は『ん?』と振り返る。
「どうしたの?」
『律花…今日は一緒に帰れる?』
律花は眉を八の字に下げる。
それを見ただけで分かってしまった。
『…用事?』
「本当にごめんっ!夜でもいいなら、希愛の家行くよ?」
『じゃあ、ご飯食べてっていいよ。お母さんもきっと喜ぶ』
律花は嬉しそうに笑う。
「じゃあ、用事終わったら希愛の家に遊びに行くね!一緒に帰れなくてごめんね?明日は一緒に帰ろう」
『大丈夫だから謝らなくていいよ。用事なら仕方がないんだから。じゃあ、またあとでね』
律花はコクりとうなずいた。
ぶんぶんと腕を大きく振り、教室から去っていった。