蒲公英
『パパ』はずっといなかったけど、お父さんは今まで三人いた。
うちのママは再婚を三回している。
一人目のお父さんができたのは保育園の時。
その人は煙草臭くてギャンブルばかりしてた人。
ギャンブルでママがコツコツと貯めてきたお金にまで手を出したから、ママは離婚を決意した。
一人目のお父さんには抱っこされた記憶どころか喋った記憶すらない。
二人目のお父さんができたのは小学校二年の時。
お父さんは茶髪でピアスを開けていた。
耳や舌にまであるピアスが幼いあたしには気持ち悪くて仕方がなかった。
このお父さんは浮気性で一週間、仕事だと言って帰ってこないことも多々あった。
ママが浮気現場を三回目撃してついに二人は別れた。
このお父さんにも抱っこされた記憶はない。
三人目のお父さんができたのは小学五年の時。
これが一番最悪だった。
ママとお父さんはいわゆるデキ婚だった。
私に妹ができた。
以前のお父さんに比べて三人目のお父さんは真面目だった。
でも、ある日、社長だったお父さんの事務所が倒産した。
それからお父さんはあたしに暴行を加えるようになった。
殴られた。蹴られた。
「お前と俺は他人だもんな」
がお父さんの口癖だった。
ママは必死にあたしをかばった。
そんなママをお父さんは殴るようになった。
夫にDVに耐えられなくなったママは離婚を決意した。
まだ一歳だった妹をDV男に預けるわけにもいかず、かといって安月給で精神的にもボロボロだったママも育てられなくて妹は施設に送られた。