白夜

街の酒場

「そっちは片付いたかい。」
「いえ・・・まだ・・・。」
今宵も夜が更け、街は静まり返る。
そして彼らが動き出すのだ。

ちゅる・・ちゅるる・・・・

「くぱぁ、うめぇうめぇ」
短髪の男がどんと胡座をかき、膝を叩きながら笑っている。
「雷雨、お前は戦にでんのかい?」
長い髪の女が男に近づき皿を上げた。
耳にかかる髪を背中に流し、その金色は艶を帯び色っぽさを誘う。
「龍桜は血の気が荒いのう。戦と言わんでくれ、それに今から行くから飯を食うとるんじゃ、こっちは。」
さっきの短髪が睨むように残りのモノを平らげた。
「あたしはべつに血の気が荒いワケじゃないわ」
少し怒り気味の女に短髪が言う。
「はは、気も短いようじゃ。誰に似たんだかねぇ、龍桜。」
睨みをきかす女を無視し短髪の目線の先に立つ男。
「なぁ、龍」
はは、と嫌みのように笑いながら短髪はその男に近寄った。
その男は一言も口を開かず、腕を組み木の扉を背もたれに体の側面を店内に向けて地面を仰いでいた。
長い前髪からたまに見える目は細く鋭い。
左目に包帯が捲かれているようだが、鼻が高いせいか、右側のこちらからは伺えない。
右の頬には罰印の傷があり、トレードマークとされていた。
だが、なんと言えど男の特徴はこの、赤い髪。
長く下の方で束ねたその髪は何か不思議な空気を作っていた。


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