今宵、桜と月の下で
衝動的に、俺は部屋を飛び出していた。
スニーカーのかかとを踏んづけたまま階段を降り、公園へ走り込もうとしたところで、目の前を車が通過した。
危うく轢かれそうになったが……おかげで少し冷静になる。
喉まで心臓が競り上がってるかと思うほどの脈動を感じる。
どくんどくんと、変な耳鳴りもする。
俺は、たしかに手招きされた。
それは、彼女が俺の作り出した幻だから?
俺を化かしているんだろうか?
疑問を抱えながら、彼女へゆっくり歩み寄る。
カメラのレンズ向こうにしかいなかった彼女が今、街灯に照らされる、すぐそこのベンチにいた。
「こんばんは」
と、挨拶をされる。
「……なにか、俺に?」
なのに俺は、挨拶を返すより、そう先に訊いてしまった。訊きたくて仕方なかった。
くすくすと、彼女が笑う。
「バラバラのお花見より、一緒のほうが楽しいでしょ? それにほら」
「?」
す、と指差された空には、上弦の三日月。
「今日は、とても月が綺麗だしね?」
ああ……もしも――
スニーカーのかかとを踏んづけたまま階段を降り、公園へ走り込もうとしたところで、目の前を車が通過した。
危うく轢かれそうになったが……おかげで少し冷静になる。
喉まで心臓が競り上がってるかと思うほどの脈動を感じる。
どくんどくんと、変な耳鳴りもする。
俺は、たしかに手招きされた。
それは、彼女が俺の作り出した幻だから?
俺を化かしているんだろうか?
疑問を抱えながら、彼女へゆっくり歩み寄る。
カメラのレンズ向こうにしかいなかった彼女が今、街灯に照らされる、すぐそこのベンチにいた。
「こんばんは」
と、挨拶をされる。
「……なにか、俺に?」
なのに俺は、挨拶を返すより、そう先に訊いてしまった。訊きたくて仕方なかった。
くすくすと、彼女が笑う。
「バラバラのお花見より、一緒のほうが楽しいでしょ? それにほら」
「?」
す、と指差された空には、上弦の三日月。
「今日は、とても月が綺麗だしね?」
ああ……もしも――