今宵、桜と月の下で
もしも、今日の月でいいのなら――

「お花見とお月見、一緒にしません?」

「お邪魔で、ないのなら……」

君と一緒に、見ていたい。

そうして俺らは、空が秋桜色に染まり始めるまで、他愛ないことを話し合った。

散ってしまう花びらほど多くはない話題は、転回する月ほど、綺麗なものでもなかった。

だけど、楽しかった。
彼女が渡してくれた串団子を食べながら、なんとなく、だけど強く祈ってみた。

もしも明日の月も綺麗なら、彼女と一緒に見ていたい。

一億年前より、千年前より、百年前より、去年よりなにより、未来の月を見たいと思った。

できるなら、できるなら彼女と、一緒に。
< 7 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop