恋獄 ~ 晩餐会 ~
雪也は優雅な笑みを浮かべながら花澄の杯に手際よく酒を注いでくれる。
その気品ある仕草はまさに御曹司という感じだ。
続いて雪也は黒い瓶に入った酒を手早く環の杯に注いだ。
そのラベルに書かれているのは……。
「『酒鬼酒』。名前からして君にぴったりだろ?」
雪也はニコリと笑って言う。
何とも形容しがたいその微笑み。
環も口元にうっすらと笑みを浮かべ、雪也を見る。
「……あいにく、私は洋酒が専門でして」
と言った環に。
雪也もうっすらと笑って言った。
「君ほどの酒豪であればどんな酒でも喉元過ぎれば水みたいなものだろう? ……ま、酒に限らず、君にとっては全てがそうなのかもしれないが」
「……何を仰りたいのです?」