恋獄 ~ 晩餐会 ~
環の瞳が剣呑な光を帯びる。
それに対抗するかのように、雪也も刃のような鋭い視線を環に向ける。
「……君が今回花澄にしたこと。仕事も住む場所も取り上げるなんて、よくもそんな酷いことができたものだ」
「兄の婚約者に手を出したあなたに言われたくありませんね」
環の冷たい声が頭上を飛んでいく。
一触即発の空気に、花澄はヒィと内心で息を飲んだ。
そんな花澄の横で、雪也もクッと笑って冷ややかな声で言う。
「俺という婚約者がいることを知りながら花澄に手を出した君に言われたくない」
「恋愛は基本、早い者勝ちです。うさぎはカメに勝つ。それが当然の道理です」
「強引に陥落するのがうさぎのやり方というわけか?」
「金で相手を買おうとしたカメも相当だとおれは思いますが?」
「君も金で買おうとしただろう? 俺を罵る資格は君にはない」
花澄の頭上でバチバチと火花が散る。
終わる気配のないその不毛な会話に、花澄は慌てて割って入った。
「はい、そこまでー! まずはご飯食べよ?」