恋獄 ~ 晩餐会 ~
花澄は二人の顔を見、無理やり笑顔を浮かべて言った。
せっかくの宴席なのに初めから最悪な空気になるのは避けたい。
そんな花澄を卓の向かいから眺めていた賢吾と春燕が、はぁと息をつく。
「……はぁ。なんというか、花澄ちゃんが二人いればよかったのにな」
「そうねぇ~。二人いれば、最初から揉めずに済んだかも?」
「僕、クローンの研究でもやろうかな。けっこう需要あると思うんだよね。僕の知り合いの弁護士もずっと悩んでてさ~」
「……それって作中で出てきたあの弁護士さん?」
「そ。結局婚姻届とかは預けなかったけどね。……彼は実は僕の大学の同期なんだけど。道ならぬ恋ってやつに昔からハマっちゃっててさ」
「道ならぬ恋?」
「従妹というか妹と言うか、とにかく恋しちゃいけない人に恋しちゃっててね。でもその彼女、なんと彼含めて三人の男に言い寄られててさ~……」
「あらあら、大変なのね~……」
春燕は首を傾げながら言う。
花澄は思わず息を飲んだ。
……今、何やらとんでもないことを聞いた気がするのは気のせいだろうか。
何だかよく分からないが、衝撃の事実を明かされた気がする。