恋獄 ~ 晩餐会 ~
翌週の土曜。
夕刻。
花澄は月杜家の本宅を訪ねた。
インターホンを鳴らし、メイドの案内に従って門をくぐる。
と、そのとき。
「花澄お嬢様っっ!!」
玄関口から聞き覚えのある女性の声がし、花澄は思わず立ち止まった。
見ると。
グレーの使用人服に白いエプロンをかけた律子が、感極まった様子で玄関から走り出てくる。
相沢律子。47歳。血液型A。
環の母。前編の終わりで空港からどこかへと旅立った。
実は花澄とたまにメールで近況報告をしているのだが、どこに住んでいるのかは未だに不明だ。
「お久しぶりでございます、お嬢様! あぁ、本当にお嬢様にお会いできるなんて……っ」
「りっ、律子さん、どうしてここに!?」
「実は私の今の勤め先のご主人の友人の親戚の先輩の知り合いが、月杜の奥様の茶飲み友達でして。今日は特別の計らいでお招き頂いたのですよ」
「よ、よくわからないけど……そうなんだ……」