恋獄 ~ 晩餐会 ~



花澄はたじろぎながらハハと笑った。

まさかここで律子に会えるとは思ってもみなかった。

花澄は律子に連れられ、月杜家の応接室へと通された。

応接室に入ると、見知った壮年のご婦人が穏やかな笑顔と共に二人を迎え入れてくれた。


月杜小百合。49歳。血液型O。

雪也と賢吾の母。息子二人に振り回され、ここ数か月で一気に白髪が増えたことを日々嘆いている。


「いらっしゃい、花澄ちゃん。来てくれて本当にうれしいわ」

「こんにちは、小百合さん」


と、花澄が笑顔を浮かべて言うと。

小百合はその顔をまじまじと見つめ、頬に片手を当ててはぁぁとため息をついた。


「……本当に、花澄ちゃんはうちのバカ息子にはもったいないくらいだわ。律子さんがずっとお世話していただけのことはあるわね」

「いえ、お嬢様の気質が真っ直ぐなのは生まれつきでございます。うちのバカ息子にも、お嬢様は本当にもったいのうございます」

「うちのバカ息子よりは環君の方がまだいいんじゃないかしら?」

「めっそうもございません。うちのバカ息子に比べたら、雪也様の方が遥かに人格者でいらっしゃる」

「そんなことないわ。うちのバカ息子ときたら……」

「いえいえ、そんなことはございません。うちのバカ息子に比べたら……」


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