野良猫の飼い馴らし方。
「…何見てんの~?」
チクリと。
まるで刺さるがごとく、するどい視線を注がれた。
そんなに悪いことだったのかな…。
あたしは、それから逃れるように俯いた。
「やっぱ君、ノラちゃんだったんだね?」
頭上からの言葉に頭をあげると、"鼻のいい"あの人がいた。
ニコニコと笑うその表情は、どう見たって張りつけた仮面みたいで。
正直すぎるあたしの、顔が歪むのが分かった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ…
"あんな事"、思い出したくなんてないのに…
忌まわしい記憶が、あたしな中を駆け巡り、涙が溢れだした。
「…!?」
その言葉とともに腕の力は弱まったけど、あたしはその場に力なく座り込む。
微かに身体が震えていた。