野良猫の飼い馴らし方。
触れる部分が気持ち悪くて、息が詰まりそうなのに…
この笑顔仮面の男は、簡単だろうとでも言うように微笑む。
「そ、なっ…!」
知らないくせに…
あたしのこと、知らないくせに!
ますます涙が溢れてきて、あたしを抱き上げている相沢先輩の服が濡れていくのが分かった。
あたしを汚したのも、捨ててこんな風にしたのも、全部…男の人なのに…
これ以上関わりたくないと、もう1度体を捻ったとき。
「…泣くな。」
冷たい声と一緒に、あたしに柔らかいものが触れた。
それは、あたしの頬を流れる涙を拭うように微かに移動する。
ビクリと反応して体を引けば、その分寄ってくる、それ。
相沢先輩の手の甲だと気付く頃には、幾分か涙がおさまっていた。
「…あ、いざ―」
「誠哉。」