野良猫の飼い馴らし方。
あちこちキョロキョロと見渡すあたしを、不審者扱いする視線。
一番近くから感じたその方へと、目を向ける。
「あの…」
「なにか。」
キツい香水。キツい言葉。高い音。真っ赤なピンヒール。
はぁ…なんでこんな人に話かけたんだ、あたし。
「あ、の…出入口は…」
「突き当たりを右。」
勇気と一緒に出した言葉は、呆気なく遮られた。
淡々とした口調でそう告げたその人は、すぐに反対側へと歩きだす。
親切だけど…感じ悪い人。
そう思いながら、マンションを後にした。
幸い、繁華街の近くだったらしい。
賑やかな色と音、匂いを、なんとなく感じる。
自分の五感だけを頼りに、あたしは繁華街を目指して一歩ずつ進みだした。