野良猫の飼い馴らし方。


「ノラちゃん、勝手に出てったらダメでしょ~?」

桐谷先輩がそう言いながら、あたしの足に触れた。

チクリとしたのは恐らく、彼の手にある消毒セットの数々が原因だろう。

申し訳ないやら恥ずかしいやらで足を引っ込めれば、睨まれた。

「や、あの…」

「わざわざぁ、してあげてるの~。わかる?」

嫌みなのか脅しなのか、なんとも分かりにくいそれに、あたしはもう動くことができなかった。

ソックスを履いているから大丈夫だと思っていたのに、意外にも足は傷だらけのようで。

何度もくる激痛に足を動かす度、鋭い睨みと恐ろしい文句が襲いかかってきた。


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