メインクーンはじゃがいもですか?

「どれ」

 おでこのライトのスイッチを入れて、手袋をはめた手でメモを取る。

 特殊なライトでメモを照らし、ある薬品につけて、『クローゼットの中はいけませんね』

 と書かれたメモをあぶっていた。


 例の男は三郎がクローゼットの中にいたことを知っていた。

 メモには『俺の方が先』と鉛筆で記されていた。その下に矢印。その先は三郎が隠れていたクローゼットの中を指していた。

 挑発され、しかもバカにされたと感じた三郎は頭に血が上り、今すぐ追いかけてとっつかまえたいと思ったが、霧吹に連絡した時に、部屋の中をひっくり返して『それ』を探しだし、メモを持ってあなたののところへ行けとの指示だったために、怒りをみぞおちの深いあたりに押し込めて、言われたことをやった。


「んーこれはこれは」


 あなたのはうなり声を上げ、禿げ上がったおでこに皺を寄せた。


「どうっすか? いそうですか? 誰だかわかりますか?」

 メモに上がった指紋を特殊な機械で照合していたあなたのは、おもむろにライトのスイッチを消した。


「いませんねぇ」


 机の上にメモを放り投げると腕組みをして三郎と向かい合った。


「ってことは」三郎も腕組みをした。



「素人の仕業でしょうねぇ」



「くそが。とうしろうか」



    
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