メインクーンはじゃがいもですか?

 霧吹は今日も白いスーツを着ていた。

 いつも通り黒いシャツをインするあたり、まことしやか、奇特な趣味だ。

「さっさとしろ!」

 ちんたらしている葵に玄関から叫ぶ。

 かばんを持ってダッシュしてきた葵は次郎に「すみません」と言い、霧吹の顔は見ないことにした。

 3人揃ったところで大学へ向かう。今日もしっかり講義が入っていた。

 霧吹邸を出たあたりで、見慣れない白いリムジンが停めてあるのが目に着いた。

「若、あれってもしかして」

 横付けされている白いリムジンに見覚えがある霧吹は、あからさまに嫌な顔をした。

 葵はそのリムジンを見て、霧吹の顔を見て、次郎の方を見た。


 が、誰一人葵に説明しようと思う人は、この車内にはいなかった。


 白いリムジンの運転手が出て来て後部ドアを開け、中から出て来たのは、

 修だ。

 春の風のように柔らかい微笑で近づく修、

 運転席の次郎に目をやると、次郎は嫌々ながらも頭を下げた。

 霧吹がいる場所を正確に捉えている修は、勝手知った足取りで歩いてくる。

 霧吹は舌打ちをひとつくれると、真っ黒い窓を少しだけ開けた。
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