メインクーンはじゃがいもですか?
霧吹の携帯、もとい、葵の携帯にメールが届く。
「あ、それ私のだ」
葵が久しぶりに見る自分の携帯を懐かしがって顔を緩めた。
霧吹はそれを無視し、メールを読んだ。
『今日は生態学ですね、大学でお会いしましょう。ところで昨日家にいたスキンヘッドの男はいったい誰ですか? まさか、浮気なんてしていませんよね?』
メールの内容を見ようと霧吹に近づき手元の電話の画面を盗み見し、内容を読み終えると「何それ」と泣きそうになる。
犯人は素人でこっちの世界のもんじゃないと三郎から連絡を受けていた霧吹は、「今日は何人くらいいんだよ」と葵に聞いた。
「今日の講義は20人くらいですきっと」
半べその葵は放置して朝にはふさわしくない笑みを讃え、今日初めて葵と目を合わせた。
「その中にいるってわけだ。五千ま……いや、犯人がな」
「今五千万って言いませんでした?」
葵が霧吹の目を覗き込むがそれを横目にぷいっと流す。
「なんの話だ? スキンヘッドか? あれは気にするな大丈夫だ」
「五千万ってなんですか?」
「しつこい野郎だな。なんの話だ? 面倒くさい奴だな。余計なことは気にすんな」
「五千万ってなんですか!」
「黙れタコ!うるせえぞいちいち」
すっとぼけながらメールを閉じると、自分の内ポケに元葵の携帯(iPhone)をしまった。