メインクーンはじゃがいもですか?
「霧吹さん、私、携帯無いとけっこう困るんですけど」
自分の携帯が入っている霧吹の内ポケらへんをじーっと見る。
「なんで困るんだよ。こんなもんなくても生きていけるだろうが」
「知らないと思いますから言いますけど、私にも一応友達がいるんですよね、だからメールとか、そういうの返さないと怪しまれますし、っていうか大学の予定もサイトで見れるから(最近覚えた)、けっこう不便です、無いのってけっこうしんどいです」
大学の予定がネットで見られるということを最近覚えたことは伏せておこう。
そうか? そんなにしんどいことなのか。とぶつぶつ言うと霧吹はいとも簡単に自分の私物の携帯を葵に渡した。
「これでも使ってろ」
「え」
霧吹の携帯を受け取った葵はどうしたらいいものか考えるのに時間がかかった。
「Gmailなら新しいの作れるだろ? 作ってそれを使え。番号はその辺押せば出てくんだろ」
何気にGmailなんて知っている霧吹にびっくりする葵。
あ。きっと次郎さんだ。
と、すぐに気付く葵は次郎が機械に強いことを思い出した。
「ありがとうございます」
偶然にも霧吹の電話番号を知ることができた葵は少し気持ちがほっこりした。
「その電話はあまり使ってないやつだから、どっかから誰かがかけてくることはまず無いから安心しろ」
「霧吹さんのじゃないんですか?」
「俺のだ」
「なかったら不便じゃありません?」
「それは使っていない方だって言ったろ? こっちが俺がいつも使ってるやつだ」
その手には最新鋭の携帯電話が握られていた。
葵は少しばかり残念な気持ちになったが、顔には出さず、そうですかと平静を装った。