メインクーンはじゃがいもですか?
だから霧吹の講義は当てにならんて

【だから霧吹の講義は当てにならんて】


 狭っくるしい教室には男女半々で席についていたが、以外にもがらがらだった。

 霧吹はこの場にいないし、もちろん次郎もいない。

 不安はそれだけじゃなかった。

 20人はいると思っていた今日の講義は蓋を開けたら10人しかいない。

 この10人の中に、葵を無駄に追いかける変な奴がいると思うだけで、気がおかしくなりそうだった。

 出来れば一番後ろの席に座りたいものだが、そこらへんは既に学生に占領され、前に座るという選択肢しか残されていなかった。

 女子がだいたい前の方、やる気の無い学生は後ろ、はりきって仕方ない学生は一番前だ。

 葵は前の方のはじっこの席についた。

 時間ぴったりに教室の前扉から入って来た生態学の教授は、痩せてがりがりの初老の男。くたびれたネズミ色のスーツが悲しげに見えたが、している腕時計はきんきらと輝いていた。

 しかしながらその顔に笑顔は無い。スーツよろしくネズミ色のお顔、そこにあるのは不安だけのように見受けられる。

 自分の後ろを何回も振り返るその姿に葵は自分の感がなんとなーく当たったことを感じ取った。嫌な予感とはことごとく当たるものだ。

 霧吹が堂々と入って来た。

 手を上げて学生に挨拶する様は、何様だろう。

 教室の中をざっと見回すと学生10人。全員が犯人候補だが、まず女子は省かれる。その中に一人見覚えのある顔があった。

 体育会系男子だ。

 自動販売機のところで葵に話しかけていた奴に霧吹は狙いを定め、五千万はこいつか? と、じーっと観察したが、ニットキャップを目深に被ったこいつからは何も汲み取れなかった。



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