メインクーンはじゃがいもですか?
「先生、今日は先生が講義をなさるってことでしょうか。先生はこの前の生物学の時も、」
「あーあー、はいはいはいはい、みなまで言うでない」
顔の前で手を振り、ついでに顔も横に振る。
前回のことがあったためか、霧吹はこのめんどくさい学生をちゃんと覚えていた。一度顔面にパンチをくらわせてやりたいと思っていた鼻持ちならない学生だ。
が、そんな学生が自分に言ってくるであろう言葉を先読みした。
「生態学とはなんぞやってやつだろう?」
にたりと笑う顔には悪意しかこもっていない。
入ってきた時の雰囲気とまるで違う霧吹に、学生は興味津々で耳をダンボのように大きくした。
「生態学ってのはよぉ……」
葵は首を小刻みに横に振り、霧吹にやめて! と念を送る。
霧吹はそれを自分の周りに張ってあるバリアーによってはじき返した。
あたかもそれは、『地球全体バリア』にふさわしい。
「調達するところから始まる」
は?
?????
クエスチョンだらけの学生は首をひねる。
教授も首をひねる。
葵も首をひねる。
次郎は頷く。
「いいか、調達はそれ相応の置屋からみつくろうことができる」
ん? 置屋? みつくろう? 何? なんの話? 意味が分からない。
「まずは、そこに生まれたままの姿で横に寝てもらい……」
鼻呼吸をひとつ。
静かに淡々と、目を閉じて、まるで何かを思い出すかのように顔の表情を変えた。
「そうだ、生まれたまんまの姿で横になってもらい、そしてそこかしこに葉っぱを敷き色々な寿司の具材を乗っけていき、そしてからの……」
「先生! 講義を始めてもらえませんか!」
バンと大きく音を立てて机を叩き立ち上がった葵は、逆に先を読んだ。絶対に放送禁止用語炸裂の内容に決まっている。
この先霧吹が何を言い出すのか察知した葵は、霧吹にではなく、ちゃんとした教授に大きな声で言っていた。
「時間もないですし、始めてくださいませんか! ね、先生、お願いします」
これ以上この人に話をさせてなるものかと必死の葵の訴えに、教授も小刻みに首を上下させた。